サントリー 五代目チーフブレンダー・福與伸二氏 ワールドウイスキー”碧Ao”を語る

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写真:左)サントリー 五代目チーフブレンダー 福與伸二 右)株式会社リカーマウンテン代表取締役社長 伊藤啓
左)サントリー 五代目チーフブレンダー 福與(ふくよ)伸二
右)株式会社リカーマウンテン代表取締役社長 伊藤啓

世界で初めて、自社で持つ蒸溜所で5大ウイスキーの原酒をブレンドして作られた「”碧Ao”」の魅力を、直接ブレンダーから聞きたい!との思いで「伝統と革新」の精神に基づくブレンド技術を持つサントリー チーフブレンダーである福與伸二氏にその魅力を伺う機会をいただいた。

2014年にサントリーがビーム社と手を組みビームサントリーが誕生しました。ビームサントリーは、スコッチ・アイリッシュ・アメリカン・カナディアン、そしてジャパニーズという世界5大ウイスキーの蒸溜所を保有する、唯一のスピリッツメーカーとなったのです。2社の統合の作業を進める中で自然と5大ウイスキーをブレンドするというアイデアがいろいろなところで発想・発案されました。並行して、欧米日のウイスキーの技術者の交流も始まりました。

そしていよいよ具体的に「五大ウイスキーのブレンド」という商品化プロジェクトがキックオフされたのが2017年8月8日。まだブランド名も、目指すべき味わいも価格も未知数でのスタートでした。それは、通常のサントリーウイスキーの商品化とは全く違う要素を含んでいました。まず、どのような味や香りを目指すのか、そのイメージを探し求めて各国から原酒を集めることから始めました。五大ウイスキーをブレンドする、というアイデアはあちこちから頂きましたが、どういう香味を目指すのか、は誰も言及してくれませんでしたので(笑)。 

日本のウイスキーならともかく、他国のウイスキーをブレンドした時に、それらがどのように振る舞うのか。トップに開いて主張するのか、あるいはアフターテイストに効くのか。どのウイスキーとならば響きあい、どのウイスキーとなら打ち消し合うのか。トライアンドエラーを繰り返す中でゴールを探し求める作業が続きました。更に、従来の「ブレンドによる調和」を目指すのに加え、「ブレンドに供した個々の五大ウイスキーの個性も垣間見えるように」というコンセプトも加わり、多面的な検討が必要になりました。一年半の歳月を経て、ようやく形になってきましたが、ブレンド後の後熟でも予想以上の変化を遂げるなど最後まで新しい経験の連続でした。

ボトルは世界五大ウイスキーを示す五角形という斬新なモノに仕上がりました。また、デザインも世界の原酒が一つに集まる様を表現すべく角を正面にしたラベル配置にするとともに、Aoというアルファベットを毛筆で表現することで、世界の原酒と日本の匠の技の出会いを表現しました。

味わいは、一言で言えばウイスキーとしてはユニークかつ複雑。様々な飲用シーンで、多彩な香りや味わいが変化して出てくるウイスキーになったと認識しています。最後までこだわったのは、先入観なしに召上がってもウイスキーとしての樽熟成した美味しさを感じられること。5大ウイスキーをブレンドしたという「情報」に頼らない美味しさ、です。

ストレートにハイボール。

オン・ザ・ロックスに水割り。

料理をつくりながら気軽に。いろいろな食事に合わせて楽しく。夜、”碧Ao”に正面から向き合って真剣に。時には五つのウイスキーに思いを馳せながら。皆様の生活に彩りを添える、そんな役割を演じることが出来れば望外の幸せです。

実際この「”碧”」の完成形を自宅で何本も飲み重ねたとのこと。皆様もこの新しい挑戦の末生まれたウイスキーに足を踏み入れてみてはいかがだろうか。

編集談話

福與氏に普段のまれるウイスキーは?と聞いたところ「トリス」と、意外な答えでした。ハイボールにして最後にレモンピールを加えるとドリンカブルになるとのこと。山崎12年などは?との質問には「それ飲むと仕事になっちゃうからね(笑)」とのこと。確かに良いモルト、ブレンデッドだと向き合うという言葉がふっと出るような『普段のみ』のウイスキーは私にとっては何だろう?と興味深い談話でした。

文/伊藤啓

撮影・取材日:2022年1月20日

写真:サントリーワールドウイスキー"碧Ao"

サントリーワールドウイスキー「碧Ao」

商品番号 513818/700ml

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