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イエノミクラブ編集部
焼酎をブレンドする。これは焼酎造りにおいて日常的な工程。むしろ、流通している多くの焼酎が、様々な原酒をブレンドして瓶詰めされている。今回の企画は〝それ”とは一線を画す。二つの焼酎蔵の原酒をブレンドし、一つの商品として世に送り出す。業界でも稀なプロジェクトである。
芋焼酎の本場九州南部で、日本一の生産量を争う鹿児島と宮崎。今回のプロジェクトに賛同してくれたのは、その両県に位置する二軒の老舗焼酎蔵。
宮崎県の最南端、串間市に蔵を構える「幸蔵酒造(こうぞうしゅぞう)」。そこから西へ車で約40分、鹿児島県東部の港町大崎町に 位置するのが「天星酒造(てんせいしゅぞう)」。県は違えど、県境を挟んだ言わば「ご近所同士」。両蔵代表の意思が同調し、更に踏み込んだ「”甕”仕込み原酒」同士のブレンドにまで発展したこのプロジェクト。果たしてどんな芋焼酎に仕上がるのか・・。
全量”甕”造り、”甕”熟成の蔵
首元まで土に埋もれた”甕”壺の数々。その全てが和”甕”で創業当初から使用されており、これこそが幸蔵酒造の神髄「全量”甕”造り・”甕”熟成」を実現させる。一次仕込みから二次仕込み、蒸留後の熟成も全てこの”甕”の中で行う、強烈な拘りだ。現代では国内に職人がおらず、新たな”甕”は仕入れられない為、破損箇所も補修を重ね今日まで使用されている。海外製の”甕”では、微妙な色移りや香りの違いがある為、和”甕”しか使用しないのだ。”甕”での熟成は、液面に浮く油分を取り除く作業が必要。ネルの生地を用い、日々手作業での濾過を行う手間の入れようだ。これにより、更にまろやかな味わいに仕上がるのだそう。
原酒選定
ブレンドする原酒を選定。数多の”甕”熟成酒の中から、ブレンドに適し、それでいてインパクトが残るものを求め辿り着いた酒質は、芋品種「黄金千貫」の黒麹仕込み。”甕”から滲み出るどこか懐かしい土の香りが、ブレンドにも耐え得る個性として感じられる。この個性がブレンドでどう変わるのか?大きな期待を抱き、天星酒造を目指し西へ舵を取った。
石蔵による”甕”寝かせ
天星酒造に到着すると、すぐに”甕”貯蔵庫へ向かう。幸蔵酒造とは異なり、石蔵の中でどっしりと佇む”甕”は、とても力強く感じられる。日光を通さず昼夜の温度差の少ない石蔵の中で、”甕”壺に入れてゆっくりと熟成する。天星酒造の商品の中でも、数少ない銘柄にしか経験させない贅沢な工程である。その”甕”の中から選んだ原酒は、2年以上の”甕”熟成酒。あえて幸蔵酒造の原酒と同じ黄金千貫の黒麹仕込みを選んだ。味わいは熟成が生むまろやかな甘味と澄んだ後口で、天星酒造の神髄「早垂蒸留」で醸された自慢の原酒だ。黄金千貫・黒麹。同じ原料から造られた、異なる個性を持った二つの”甕”原酒。両蔵自慢の酒をいよいよブレンディングする。
幸蔵×天星 “甕”ブレンド
二つの原酒を様々な比率にブレンドし利いていく。「こうも味わいが変わるのか!」計算式では表せない、僅かな比率の差で幾重にも表情を変えるブレンドという魔術に、私のみならず蔵人自身も驚きを隠せずにいる。辿り着いた両雄の個性を最大限引き立たせる最高地点は、昔懐かしい”甕”の香り、熟成された甘くまろやかな旨味を、何重にも増幅させた味わいに。宮崎、鹿児島。芋焼酎の二大産地の焼酎蔵が、自慢の”甕”で育てた原酒。折り重なったその味わいが魅せる焼酎のブレンドの可能性を、是非体感して頂きたい。
文/リカーマウンテン 和酒バイヤー 澤井
岳蔵(がくら)双甕仕込み
幸蔵酒造の”甕”原酒と天星酒造の”甕”原酒を絶妙にブレンド。”甕”の強いニュアンスと角の取れたまろやかな芋の旨味が複雑に絡み合う芋焼酎。1,200本限定生産。
※商品名の「岳蔵(がくら)」は天星酒造の主力商品、岳宝の「岳」と幸蔵酒造の「蔵」を取り命名されています。
商品番号 124865
1,800ml/Alc.25%
※こちらの商品は完売いたしました※
幸蔵酒造
「幸せをもっとお届けできる蔵でありたい」という願いが込められた社名の通り、素焼きのかめ壷造りにこだわり、手間隙を惜しまず、まごころを込めて、味わい豊かな焼酎を造り続けています。
宮崎県串間市大字串間1393番地1
TEL:0987-72-0305
http://www.kouzou-shuzou.co.jp/
天星酒造
1901年創業。「大自然の営みに学びながら」を理念に、様々な醸造技術を開発。世界の人々に愛される酒造りを目指し日々挑戦を続けています。
鹿児島県曽於郡大崎町菱田1270
TEL:099-477-0510
https://tensei-shuzo.com/
蔵紹介は他にもたくさんしていますので、是非こちらもご覧ください
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